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現代の怪異談を収集した「新耳袋」シリーズの第6集。今回は「守」「来」「音」「話」「現」「視」「異」「妖」「居」の9つのキーワードに分類された99話が収録されている。本書が、他の実話怪談本と一線を画しているのは、余計な脚色や解釈をいっさい省略し、取材に基づいた事実のみを淡々とつづっている点だ。
たとえば「塩」という短い話。新築の家に越して3か月ほどたったころ、家に帰ると部屋中に塩がまかれている。理由を聞いても両親は何も教えてくれない。やがて数日が過ぎ母親が「おさまりましたねえ」と一言。それに父親が「ああ」と答え、話は唐突に終わる。そこには、読み手を恐怖に陥れようといった作為はみじんも感じられない。しかし、それゆえに圧倒的なリアリティーが行間から漂ってくる。ドアの下のすきまからのぞく足、玄関にたたずむ真っ赤な人影、つぶれたホテルでひと部屋だけともる明かり…。99の奇怪な話は、日常と非日常の境界をあやふやにする異界への扉だ。
本書のタイトルは、世の中の怪談・奇談を1000あまりも記録した根岸鎮衛(やすもり)の著作『耳袋』に由来する。江戸南町奉行を17年つとめた根岸の『耳袋』は、同時に庶民の風俗を写し取ったものでもあった。「百物語が完成すると怪異が起こる」というのは有名な話であるが、本書にも「一晩で完読すれば怪異が訪れる」といった噂がまことしやかにささやかれている。(中島正敏)
出版社/著者からの内容紹介
人に語られ、人に伝わってこそ怪談に命が宿る。この世の不思議と底知れぬ怖さを垣間見る、怪談本の決定版。 --このテキストは、 文庫 版に関連付けられています。
内容(「BOOK」データベースより)
本書は、遠い昔の怪談ではなく、この現代に起こった“百”の怪異を収録したものである。基本的には一切の究明、解釈を求めず、ただ起こった現象を記しただけのものである。
内容(「MARC」データベースより)
人がいるかぎり、闇があるかぎり、怪談は生まれつづける。現在も進行中の怪異を収録する、シリーズ最新刊。守にまつわる話、来にまつわる話、音にまつわる話など、全9章99話を紹介する。